東京地方裁判所 昭和57年(特わ)3614号 判決 1983年1月26日
裁判所書記官
久保田堅蔵
(被告人の表示)
(一)
本店所在地 東京都荒川区西日暮里二丁目一二番三号
東洋総業株式会社
(右代表者代表取締役柴崎芳男)
(二)
本籍 東京都新宿区中落合二丁目一八番
住居
同区中落合二丁目一八番二〇号
会社役員
柴崎芳男
昭和一四年三月二九日生
主文
1. 被告人東洋総業株式会社を罰金一二〇〇万円に、
被告人柴崎芳男を懲役一〇月にそれぞれ処する。
2. 被告人柴崎芳男に対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人東洋総業株式会社(以下「被告会社」という。)は、頭書所在地(昭和五六年三月二四日以前においては東京都中央区日本橋本石町四丁目六番地)に本店を置き、出版事業等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人柴崎芳男(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、企画編集収入、掲載料収入を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五三年九月一日から同五四年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が七二八三万五八六四円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年一〇月三一日、東京都中央区日本橋堀留町二丁目六番九号所在の所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額と納付すべき法人税額がともに零である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五七年押第一九〇一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同社の右事業年度における正規の法人税額二八二九万四〇〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ
第二 昭和五四年九月一日から同五五年八月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四五八七万四九〇七円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年一〇月三一日、前記日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七三万四八八八円でこれに対する法人税額が二〇万五五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同社の右事業年度における正規の法人税額一七五〇万九六〇〇円と右申告税額との差額一七三〇万四一〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全般につき
一 被告人兼被告会社代表者の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 志村貞夫(二通)、中村嘉治、品川信雄、高田祐一の検察官に対する供述調書
一 登記官作成の商業登記簿謄本二通
判示各事実ことに過少申告の事実及び別紙(一)、(二)修正損益計算書中の各公表金額欄記載の内容につき
一 押収してある法人税確定申告書二綴(昭和五七年押第一九〇一号の1、2)
判示事実ことに別紙(一)、(二)修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき
一 収税官吏作成の企画編集収入調査書(右修正損益計算書(一)、(二)の勘定科目中の各<1>。以下調査書はいずれも収税官吏の作成したもの)
一 掲載料収入調査書(同(一)の<3>、同(二)の<36>)
一 調査収入調査書(同(二)の<2>)
一 外注加工費調査書(同(一)、(二)の各<4>)
一 仕入調査書(同(二)の<5>)
一 給料調査書(同(一)の<5>、同(二)の<7>)
一 家賃調査書(同(一)の<6>、同(二)の<8>)
一 福利厚生費調査書(同(一)の<7>、同(二)の<9>)
一 旅費交通費調査書(同(一)の<8>、同(二)の<10>)
一 交際接待費調査書(同(一)の<9>、同(二)の<11>)
一 通信費調査書(同(一)の<10>、同(二)の<12>)
一 備品費調査書(同(一)の<11>、同(二)の<13>)
一 書籍費調査書(同(二)の<14>)
一 消耗品費調査書(同(一)の<13>、同(二)の<15>)
一 水道光熱費調査書(同(一)の<14>、同(二)の<16>)
一 公租公課調査書(同(一)の<15>、同(二)の<17>)
一 雑費調査書(同(一)の<16>、同(二)の<18>)
一 諸手数料調査書(同(一)の<17>、同(二)の<19>)
一 検察事務官作成の捜査報告書(昭和五八年一月八日付のうち、四枚つづりのもの。同(一)の<18>、同(二)の<20>)
一 広告宣伝費調査書(同(一)の<18>、同(二)の<20>)
一 運賃荷造費調査書(同(一)の<19>、同(二)の<21>)
一 報酬調査書(同(一)の<20>、同(二)の<22>)
一 諸会費調査書(同(一)の<21>、同(二)の<26>)
一 修繕費調査書(同(一)の<22>、同(二)の<22>)
一 受取利息調査書(同(一)の<23>、同(二)の<28>)
一 雑収入調査書(同(二)の<29>)
一 調査費調査書(同(一)の<24>、同(二)の<30>)
一 取材協力費調査書(同(一)の<25>、同(二)の<31>)
一 支払保険料調査書(同(一)の<26>、同(二)の<32>)
一 寄附金調査書(同(一)の<27>、同(二)の<33>)
一 貸倒損失調査書(同(一)、<28>、同(二)の<34>)
一 支払利息調査書(同(一)の<29>、同(二)の<37>)
一 名義料支払調査書(同(一)の<30>、同(二)の<38>)
一 譲渡損失調査書(同(二)の<35>)
一 車輌廃棄損調査書(同(二)の<39>)
一 交通費損金不算入額調査書(同(一)の<31>、同(二)の<40>)
一 検察事務官作成の捜査報告書(昭和五八年一月二〇日付のもの。同(一)の<32>、同(二)の<41>)
一 事業税認定損調査書(同(一)の<33>)
一 検察事務官作成の捜査報告書(昭和五八年一月八日付のうち、二枚つづりのもの。同(二)の<45>)
一 欠損金当期控除額調査書(同(一)の<36>、同(二)の<44>)
一 豊島税務署長作成の証明書(同(一)の<36>、同(二)の<44>)
(法令の適用)
一 罰条
1 被告会社
各事実とも、昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条一、二項
2 被告人
各事実とも、行為時において右改正前の法人税法一五九条一項、裁判時において右改正後の法人税法一五九条一項
(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)
二 刑種の選択
被告人につき各懲役刑選択
三 併合罪の処理
1 被告会社
刑法四五条前段、四八条二項
2 被告人
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をする。)
四 刑の執行猶予
被告人につき、刑法二五条一項
(求刑 被告会社罰金一五〇〇円、被告人懲役一〇月)
よって、主文のとおり判決する。
出席検察官 神宮壽雄
弁護人 葛西宏安
(裁判官 園部秀穂)
別紙(一) 修正損益計算書
東洋総業株式会社
自 昭和53年9月1日
至 昭和54年8月31日
<省略>
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
東洋総業株式会社
自 昭和54年9月1日
至 昭和55年8月31日
<省略>
<省略>
別紙(三)
脱税額計算書
<省略>